夜、事務所に残って比較記事を5本ほど読んでみます。1本目は「圧倒的にLステップ」、2本目は「コスパならエルメ一択」。3本目を開くと、また違う結論が書いてあります。1時間かけて、決まったことは何もありません。
それもそのはずで、比較記事の多くは構築代行会社が書いています。自社が扱っているツールが推されるのは、ある意味で当然です。しかも比較の土台が「広告費をかけて何万人に配信する会社」の使い方になっていることが多く、従業員が数人から数十人の会社の話ではありません。
結論から言います。従業員30人以下の会社なら、まずエルメのフリープランから始めるのが合理的です。ただし、これには例外があります。「自分では作らない」と決めている会社は、Lステップのほうが向いています。
この記事では、両社の料金を実額で並べたうえで、小さな会社にとって本当に差が出る3か所と、その例外の条件を整理します。読み終えれば、自分の会社がどちらを選ぶべきかが決まります。
なぜ比較記事を読んでも決められないのか
比較の土台が、あなたの会社の使い方とずれているからです。
LINE拡張ツールの比較記事は、たいてい「ステップ配信で見込み客を育てて商品を売る」という前提で書かれています。そこでは、流入経路分析やクロス分析、リッチメニューの出し分けといった機能が評価軸になります。
しかし従業員30人以下の会社が最初に必要とするのは、たいていこの3つだけです。
- 予約や問い合わせを、営業時間外でも受けられるようにする
- 同じ質問への同じ返答を、自動で返す
- スタッフからの連絡を、記録が残る形で受ける
この3つは、エルメもLステップも、どちらも無料プランでできます。つまり機能で悩む必要がほとんどない。だから比較すべきは、機能の多さではなく「どこまで無料で粘れるか」と「次の一段がいくらか」になります。
その前に:料金は二階建てだと知っておく
比較に入る前に1つだけ。LINEの料金は、LINE公式アカウントと拡張ツールで別々に課金される二階建てです。どちらか一方の上限に当たれば、そこで配信は止まります。
たとえばLステップのスタートプラン(月5,000通)を契約していても、LINE公式アカウントがコミュニケーションプラン(月200通)のままなら、実際に送れるのは200通です。この構造を知らないまま「ツールを有料にしたのに配信が止まる」という失敗が、両社共通で起こります。
この二階建ての仕組みと、無料枠の使い切り方については、エルメの無料プランでどこまでできるかを整理した記事で詳しく解説しています。
料金を実額で並べる
結論を先に言うと、無料プランでは配信数に5倍、有料の第一段では月額に約2倍の差があります。
無料プランの比較
| 項目 | エルメ フリープラン | Lステップ フリープラン |
|---|---|---|
| 月額 | 0円 | 0円 |
| 月間配信数 | 1,000通 | 200通 |
| ステップ(シナリオ)配信 | 使える | 1個まで |
| 予約管理 | カレンダー各1つまで | 使える |
| 回答フォーム | 3つまで | 使える |
| タグ管理 | 使える | 使える |
| 流入経路の判別 | 3つまで | 上位プランのみ |
差が出るのは配信数です。エルメは月1,000通、Lステップは月200通。ただし前述のとおり、LINE公式アカウントがコミュニケーションプラン(月200通)のままなら、どちらを使っても実際には200通で止まります。エルメの1,000通が効いてくるのは、LINE公式アカウントをライトプランに上げたあとです。
有料プランの比較
| プラン | エルメ | Lステップ |
|---|---|---|
| 第一段 | スタンダード 10,780円/配信無制限 | スタート 5,000円/月5,000通 |
| 第二段 | プロ 33,000円/友だち10万人まで | スタンダード 21,780円/月30,000通 |
| 第三段 | — | プロ 32,780円/月50,000通 |
| 流入経路分析 | フリーで3つ、スタンダードで無制限 | プロプラン(32,780円)から |
| 年払い割引 | あり(スタンダードは月あたり9,702円) | — |
※ 金額は税込表記。2026年9月時点の各社公表情報です。
Lステップのほうが刻みが細かく、月5,000円から入れます。一方、「配信数を気にしなくてよくなる」状態に届くまでの金額は、エルメが10,780円、Lステップが21,780円。ここがちょうど2倍ほど開きます。
LINE公式アカウント込みの実額
実際に毎月出ていくお金は、ここに土台の料金が乗ります。
| 想定 | エルメの組み合わせ | Lステップの組み合わせ |
|---|---|---|
| 友だち100人・月2回配信 (月200通) | 0円 (両方とも無料) | 0円 (両方とも無料) |
| 友だち300人・月3回配信 (月900通) | 5,500円 (LINE公式ライトのみ) | 10,500円 (LINE公式ライト+スタート) |
| 友だち800人・月5回配信 (月4,000通) | 16,280円 (ライト+エルメ標準) | 10,500円 (ライト+スタート) |
※ LINE公式アカウントのライトプランは税込5,500円で計算。
興味深いのは3行目です。配信数が増えると、逆にLステップのほうが安くなる区間があります。Lステップのスタートプランは月5,000通まで5,000円だからです。ただしこの区間で必要なのは配信数だけで、予約カレンダーを複数持ちたい、フォームを4つ作りたいという話になると、Lステップ側もスタンダード(21,780円)が必要になります。
まず無料で触ってみるのが一番早い
エルメのフリープランは期間の制限なく使えます。初期費用も0円、最低契約期間もありません。実際の管理画面を触ってみるのが、比較記事を10本読むより確実な判断材料になります。
小さな会社にとって、差が出るのは3か所だけ
機能表を全部見比べる必要はありません。従業員30人以下の会社にとって、実質的に差が出るのは次の3か所です。
1. 無料でどこまで粘れるか
エルメ1,000通、Lステップ200通。5倍の差です。
これは「安く済む」以上の意味があります。無料の期間が長いほど、実際に運用してから判断できるからです。作ってみないと、自分の会社が月に何通使うのかは分かりません。最初の3か月を無料で回せれば、必要なプランが数字で見えたうえで課金判断ができます。
2. 「配信無制限」に届くまでの金額
エルメはスタンダードプラン(10,780円)で配信無制限になります。通数を数えなくてよくなる、という状態です。Lステップで同等の安心感を得ようとすると、スタンダードプラン(21,780円)で月30,000通。金額はおよそ2倍です。
もっとも、月30,000通を使い切る小さな会社はほぼありません。友だち1,000人に月10回配信しても10,000通です。ここは「無制限という精神的な安心を1万円で買うか」という選択に近い部分があります。
3. 流入経路分析がいくらで使えるか
ここが、実は一番大きい差です。
流入経路分析とは、友だちが「どこから登録したか」を判別する機能です。店頭のPOP、名刺、チラシ、Webサイト、求人媒体。どこからの登録が多いかが分かると、どこに力を入れるべきかが数字で決まります。
エルメはフリープランで3つまで、スタンダードプラン(10,780円)で無制限。一方Lステップでは、この機能はプロプラン(32,780円)から使えます。無料で3つ使えるか、32,780円払うかという差です。
小さな会社にとって、限られた販促費をどこに配るかの判断材料は、そのまま経営判断の材料です。ここを無料で試せるかどうかは、機能表の一行以上の意味を持ちます。
それでもLステップを選ぶべき会社がある
ここまでエルメ寄りの話が続きましたが、Lステップのほうが明確に優れている点もあります。正直に書きます。
毎月1回の無料スポットコンサル
Lステップは、スタートプラン(5,000円)以上の契約で、毎月1回の無料スポットコンサルが付きます(フリープランでは1回11,000円の有償)。
これは小さな会社にとって、かなり大きい価値です。「作ってみたけど、この設計で合っているのか分からない」という状態は必ず訪れます。そのとき、月5,000円の中で相談できる相手がいるのは心強い。ツールの月額というより、伴走の月額と考えると納得感があります。
構築代行の業者と情報量が圧倒的に多い
Lステップは市場に長く、正規代理店も構築代行会社も数が多い。「自社では作らず、まるごと外注する」と決めているなら、頼める相手が見つかりやすいLステップのほうが現実的です。ネット上の解説記事の量も、まだ差があります。
◆ 判断の分かれ目はここ
「自社の誰かが管理画面を触って、少しずつ育てていく」ならエルメ。無料で長く粘れることが、そのまま試行回数になります。
「作る人がいない。お金を払ってでも人に任せたい、伴走してほしい」ならLステップ。月5,000円のコンサル枠と、外注先の見つけやすさが効きます。
料金表の勝ち負けではなく、自社に手を動かす人がいるかどうかで決まります。
大手と同じ選び方をしない
ここで気をつけたいのが、「大企業が使っているから安心」という選び方です。
広告費をかけて何万人に配信する会社と、既存客300人に月数回の案内を送る会社とでは、必要な道具が違います。小さな会社が戦うべき場所は、広い市場ではなく、目の前の顧客との距離です。全顧客ではなく既存客、全業務ではなく1業務に絞る。その範囲でなら、無料プランの機能でほぼ足ります。
最初にLINE化する業務の選び方も同じです。①頻度が高い ②社長が対応している ③返答が毎回ほぼ同じ。この3つが揃う業務を1つだけ選んでください。
見落とすとトラブルになるポイント
料金と機能の話が終わったところで、選定にもう1つの軸を足します。顧客名簿を外部のツールに置くことは、法律上「個人データの取扱いの委託」に当たる場面が多く、ツール選びはそのまま「委託先の選定」でもあります。
クラウドを「使う」ことが、委託になる
個人情報保護法は、個人データを取り扱う事業者に対して、漏えいや滅失を防ぐための安全管理措置を講じることを求めています(第23条)。そして取扱いの全部または一部を委託する場合には、委託先に対して必要かつ適切な監督を行うことが義務づけられています(第25条)。
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)では、この「必要かつ適切な監督」が3つの要素で具体化されています。①適切な委託先の選定 ②適切な内容の委託契約の締結 ③委託先における取扱状況の把握です。
出典:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)|個人情報保護委員会
つまり、ツールを選ぶ行為そのものが①に当たります。料金表だけで選ぶのではなく、預ける相手として妥当かを見ておく必要がある、ということです。なお、どこまでが委託に当たるかは契約形態やサービスの仕組みによって変わるため、個別の判断が必要です。
◆ 効率化のつもりで整えた選定が、そのまま法令対応になる
難しいことをする必要はありません。契約前に次の3点を確認し、確認した内容をメモに残しておくだけで、「適切な委託先の選定」を行った記録になります。
①提供会社が安全管理措置についてどう公表しているか
②解約したときに、預けたデータがどう扱われるか
③管理画面を見られるのは誰か(スタッフに権限を渡せるか、渡した権限を外せるか)
どの会社も、料金表より探しにくい場所にこの情報があります。探す手間をかけた時点で、比較の質は上がります。
スタッフの情報も同じツールに乗る
見落とされやすいのが、顧客だけでなく従業員の情報も同じツールに入ってくる点です。
シフト希望、欠勤連絡、入社手続きの書類のやり取り。LINEで受けると便利ですが、それは社内の誰かが管理画面を開けば見られる状態になるということでもあります。誰にどこまでの権限を渡すかは、契約プランの機能差にも関わってきます。導入前に、顧客対応の担当者と労務情報を扱う担当者を、権限で分けられるかを確認しておいてください。
たとえば、こんな会社の場合
たとえば、従業員12人の建設会社を考えてみます。職人からの当日の出欠連絡を社長の個人LINEで受けていましたが、現場が増えて追いきれなくなり、会社のLINE公式アカウントに集約することにしました。
配信数は多くありません。全員に一斉連絡しても12通。月に10回送っても120通で、無料枠の200通に収まります。この会社に必要なのは上位プランではなく、出欠連絡の内容をスプレッドシートに自動で書き出す設計と、その画面を見られる人を事務担当1名に限定する権限設定です。無料プランのまま、両方とも実現できます。
※ これは仕組みを説明するための仮定の例です。実際に必要な設定は、会社の規模や体制によって変わります。
「乗り換えればいい」は成り立たないと考える
両社とも、プランを下げる方向には制限があります。
- エルメ:有料プランからフリープランへデータを保ったまま戻すことはできません。一度解約して再連携する手順になり、解約時点でデータはすべて削除されます
- Lステップ:ダウングレードが可能なのは上位プラン間のみで、スタートプラン・スタンダードプランへ下げることはできません。また申請の翌月1日からの適用になります
ツール間の乗り換えとなれば、さらに大変です。タグの設計もフォームも自動応答も、一から組み直しになります。「合わなければ乗り換えればいい」という前提は、実務上あまり成り立ちません。
だからこそ、どちらも無料で試せるうちに触っておくことに意味があります。両方のフリープランでアカウントを作り、同じ作業を両方でやってみる。1時間で、画面の分かりやすさや操作の癖は分かります。
最小構成で決める手順
LINE化する業務を1つだけ決める。①頻度が高い ②社長が対応している ③返答が毎回ほぼ同じ。この3条件で選びます。
自社に手を動かす人がいるかを決める。いるならエルメ、いないならLステップ。ここが最大の分かれ目です。
両方のフリープランでアカウントを作り、同じ作業を試す。回答フォームを1つ作って自動応答をつなぐ、くらいで十分です。触った感触は記事では分かりません。
契約前に、安全管理措置と解約時のデータの扱いを確認してメモに残す。これが委託先の選定の記録になります。
無料のまま3か月運用し、実際の配信通数を測ってから課金を判断する。見積もりより実測のほうが正確です。
よくある失敗
機能の多さで選ぶ
使わない機能は、いくら付いていても価値がありません。従業員30人以下の会社が最初の1年で使う機能は、フォーム・自動応答・タグ・リマインドの4つ程度です。この範囲なら、どちらの無料プランでも足ります。
ツールだけ有料にして、LINE公式アカウントを無料のまま放置する
両社共通で最も多い失敗です。実際に送れる通数は、二階のうち少ないほうに揃います。ツール側を5,000通のプランにしても、LINE公式アカウントが200通なら200通で止まります。
「あとで乗り換えればいい」と考えて決める
ダウングレードにも乗り換えにも制限とコストがあります。無料で試せるうちに、両方触っておくほうが結果的に早く済みます。
比較記事だけで決めて、管理画面を一度も開かない
操作の分かりやすさは人によって感じ方が違います。毎日触るのは記事を書いた人ではなく、あなたの会社の誰かです。
よくある質問
結局、どちらが安いのですか
配信数の帯によって逆転します。無料で粘る段階と、配信無制限まで行く段階ではエルメが安く、月5,000通前後の中間帯ではLステップのスタートプラン(5,000円)のほうが安くなります。自社の月間配信数を「配信回数 × 友だち数」で試算してから比べてください。
両方を同時に使うことはできますか
1つのLINE公式アカウントに接続できる拡張ツールは1つです。両方を同時に接続することはできません。試すときは、それぞれ別のLINE公式アカウントを用意するか、順番に試すことになります。
途中でLステップからエルメに乗り換えられますか
技術的には可能ですが、タグ・フォーム・自動応答・ステップ配信の設定はすべて作り直しになります。友だち自体はLINE公式アカウントに紐づいているので残りますが、ツール内に蓄積したデータは引き継げません。乗り換えを前提にした選び方は避けたほうが無難です。
どちらも使いこなせる自信がありません
その場合は、無料プランで「業務を1つだけ」自動化してみてください。フォーム1つと自動応答1本なら、半日あれば形になります。それでも難しいと感じたなら、伴走のあるLステップのスタートプランを検討する、という順序がおすすめです。
まとめ
この記事の結論
- 従業員30人以下なら、まずエルメのフリープランから始めるのが合理的。無料枠が5倍あり、判断材料が溜まるまで粘れる
- ただし「自社に手を動かす人がいない」ならLステップ。毎月1回の無料スポットコンサルと、外注先の見つけやすさが効く
- 実質的な差は3か所だけ。無料で粘れる通数/配信無制限までの金額/流入経路分析の価格
- ツール選びは「委託先の選定」でもある。安全管理措置と解約時のデータの扱いを確認し、メモに残す
- 明日やること:両方のフリープランでアカウントを作り、回答フォームを1つずつ作って触り比べる
料金表の比較は、机の上で1時間かけても答えが出ません。実際に管理画面を開けば、15分で「こっちのほうが分かりやすい」という感触が得られます。どちらも無料で試せるのですから、迷っている時間のほうがもったいない、というのが正直なところです。
エルメを選んだあと、実際にいつ有料へ切り替えるべきかについては、無料プランの限界と3つの分岐点をまとめた記事で具体的な判断基準を整理しています。
また、スタッフからの出欠連絡や打刻をLINEで受ける場合は、記録の残し方に一段の注意が必要です。LINEで打刻した記録が労働時間の記録として認められるかを整理した記事もあわせてご覧ください。
※ 料金・プラン内容は2026年9月時点の各社公表情報です。改定される場合がありますので、契約前に必ず各社の公式ページをご確認ください。










