月曜の朝9時。今週の予約リマインドを送ろうとして管理画面を開きます。いつもの手順でボタンを押すと、見慣れない表示が出て、配信が実行されません。先月まで普通に送れていました。プランも変えていません。
あるいは、こんな迷い方をしている方もいます。「無料でどこまでできるのか分からない。トラブルになる前に、とりあえず有料にしておいたほうが安全なのではないか」。
どちらも、LINEの料金が二階建てになっていることを知らないまま運用していると起きます。結論から言うと、エルメの無料プランは、小さな会社が最初の仕組みを1つ作るには十分です。止まるのは機能ではなく「量」と「個数」。そして先に止まるのは、エルメではなくLINE公式アカウントのほうです。
この記事を読み終えると、自分の会社が今すぐ課金すべきか、まだ無料のままでいいかを、自分で判断できるようになります。
なぜ「無料でどこまで使えるか」が分かりにくいのか
理由はひとつです。LINE公式アカウントとエルメが、それぞれ別々に課金される二階建ての構造になっているからです。
多くの方が「エルメを無料で使っている」と認識しています。それは間違いではありません。ただし、メッセージが実際に相手のスマホに届くまでには、エルメとLINE公式アカウントという2つの階を通ります。そして、どちらの階にも別々の上限があります。
| 階層 | 役割 | 無料で送れる数 |
|---|---|---|
| 1階:LINE公式アカウント | 実際にメッセージを配信する土台 | 月200通(コミュニケーションプラン) |
| 2階:エルメ | 自動応答・予約・タグなどを足す拡張ツール | 月1,000通(フリープラン) |
エルメの公式マニュアルにも、1,000通以上の配信にはエルメの有料プランとLINE公式アカウントの有料プランの両方の契約が必要で、それぞれの有料契約は連携していない、と明記されています。つまり「エルメが1,000通まで無料」という数字は、LINE公式アカウント側で課金していることを前提にした数字です。
無料のまま使っている会社は、エルメの1,000通ではなく、LINE公式アカウントの200通で先に止まります。冒頭の「先月まで送れていたのに、急に配信できない」は、ほぼこれが原因です。
通数は「配信回数 × 送った友だちの数」で数える
ここも誤解が多い箇所です。通数は配信ボタンを押した回数ではありません。1回の配信を何人に送ったかで消費されます。
- スタッフ20人に週1回の連絡 → 20人 × 4回 = 月80通
- 友だち100人に月2回の案内 → 100人 × 2回 = 月200通(無料枠ちょうど)
- 友だち250人に月1回のお知らせ → 月250通(もう超える)
友だちが250人を超えたあたりから、月1回の一斉配信だけで無料枠を使い切る計算になります。逆に言えば、送る相手を絞り込めば絞り込むほど、無料のまま運用できる期間は長くなります。
自動応答と1:1トークの返信は、通数を消費しません
課金の対象になるのは、こちらから配信するメッセージです。友だち追加やメッセージの受信、相手の問いかけに自動で返す応答は、無料枠を減らしません。「LINEを使うと通数がどんどん減る」というイメージは、一斉配信だけの話です。
エルメのフリープランでできること・止まるところ
結論を先に言うと、仕組みの中身はフリープランでほぼ全部作れます。止まるのは「量」と「個数」です。
自動応答、ステップ配信、タグ管理、予約受付、フォーム作成。小さな会社が「これができたら助かる」と思う機能は、無料のまま試せます。有料プランで変わるのは、その機能をいくつ並べられるか、何通まで送れるか、という上限のほうです。
| 項目 | フリープラン | スタンダードプラン |
|---|---|---|
| 月額 | 0円 | 10,780円(年払いなら月あたり9,702円) |
| 月間配信数 | 1,000通 | 無制限 |
| 自動応答・ステップ配信・タグ管理 | 使える | 使える |
| フォーム作成 | 3つまで | 制限なし |
| 予約カレンダー | 各1つまで | 各3つまで |
| 流入経路(登録元の判別) | 3つまで | 制限なし |
| リッチメニュー | 制限あり | 無制限 |
| チャット履歴の閲覧 | 180日分 | 制限なし |
| 接続できるLINE公式アカウント | 1つ | 2つ目以降は別途契約 |
なお、初期費用は0円、最低契約期間もありません。有料にしたからといって、何か月か使い続ける義務が発生するわけではない点は安心材料です(ただし後述するとおり、無料に戻すときに落とし穴があります)。
まだアカウントを作っていない方へ
エルメはフリープランのまま、期間の制限なく使えます。この記事で紹介する仕組みは、どれも無料の範囲で試せるものです。まずは実際の管理画面を触ってみるのが、一番早い判断材料になります。
「とりあえず上位プラン」にしないほうがいい理由
小さな会社が最初にやるべきなのは、無料枠の中で業務を1つだけ選んで、それを完成させることです。
人手も時間もある会社なら、上位プランを契約して、予約も採用も社内連絡も同時にLINE化できます。小さな会社が同じことをすると、どれも中途半端なまま「結局よく分からないから電話に戻る」で終わります。実際、月に1万円払いながら機能の2割も使っていない、という状態はよく起こります。
ここで、月200通・フォーム3つという制約を、邪魔なものではなく業務を1つに絞ることを強制してくれる装置として使います。全部はできない、と最初から決まっているほうが、社長は迷いません。
| 弱者の原則 | 小さな会社にとっての意味 | 無料枠での打ち手 |
|---|---|---|
| 局地戦 | 戦う場所を狭くする | 全顧客ではなく、既存客だけに配信する |
| 一点集中 | 力を1点に投入する | 最も社長の時間を食う業務、1つだけをLINE化する |
| 接近戦 | 1対1の関係を捨てない | 一斉配信ではなくタグで絞り込む(通数の節約にもなる) |
最初の1点をどう選ぶか。判断は3つの条件で足ります。①頻度が高い ②社長が対応している ③返答が毎回ほぼ同じ。この3つが揃う業務が、あなたの会社の一点です。予約の電話対応かもしれませんし、スタッフからの欠勤連絡かもしれません。
有料に切り替えるべき3つの分岐点
無料のまま粘るべきか、課金すべきか。判断できるのは、次の3つのどれかに当たったときです。当たっていないなら、課金する必要はありません。
分岐点1:月の配信が200通を超えたとき
最初に当たる壁です。そしてこのとき必要なのは、エルメの課金ではなくLINE公式アカウント側のプラン変更です。ここを取り違えて、エルメを有料にしたのに配信が止まったまま、という失敗が起こります。
| LINE公式アカウントのプラン | 月額(税別) | 無料メッセージ数 | 超過分の追加配信 |
|---|---|---|---|
| コミュニケーション | 0円 | 200通 | できない |
| ライト | 5,000円 | 5,000通 | できない |
| スタンダード | 15,000円 | 30,000通 | 従量課金でできる |
※ 2026年8月時点。なお2026年10月1日から追加メッセージの料金体系が改定されますが、影響を受けるのは無料枠を超えて追加配信できるスタンダードプランの利用者です。
友だち250人〜1,000人程度の会社なら、LINE公式アカウントをライトプラン(5,000円)にするだけで、月5,000通まで送れるようになります。この段階では、エルメはフリープランのままで構いません。エルメのフリープランは月1,000通なので、そこに当たるまではまだ余裕があります。
分岐点2:予約カレンダーが2つ必要になったとき
フリープランは、サロン・面談予約もレッスン予約もカレンダーが各1つまで、フォーム作成は3つまでです。仕組みが1つのうちは全く困りません。困るのは、事業が少し広がった瞬間です。
- 店舗が2つになり、店舗ごとに予約枠を分けたい
- 施術メニューが2種類あり、所要時間が違うので枠を分けたい
- 担当スタッフを指名できるようにしたい
- 予約フォームに加えて、問い合わせ・アンケート・求人応募のフォームも作りたい(4つ目でストップ)
ここに当たったら、エルメのスタンダードプラン(10,780円)を検討する場面です。逆に、店舗が1つでメニューも1本なら、何年使っても無料のままで問題ありません。
実際に無料の範囲でどこまで組めるのかは、美容室の予約をLINEで自動化する設計図で具体的に確認できます。予約の受付から前日リマインドまでは、カレンダー1つで完成します。
分岐点3:「どこから登録したか」を分けたくなったとき
フリープランでは、友だち追加の入り口(流入経路)を3つまでしか作れません。
店頭のPOPとWebサイトと名刺の3つなら足ります。そこにチラシ、封入するショップカード、求人媒体からの応募導線を足したくなった時点で、4つ目・5つ目が必要になります。
これは単なる数の問題ではありません。どこから来た友だちかが分からないと、「チラシは効いているのか、無駄なのか」が永遠に判断できません。広告費をかけ始める段階に入ったら、ここが投資判断の材料そのものになります。
◆ 3つに当たっていないなら、課金しない
逆に言えば、この3つのどれにも当たっていない会社は、無料のまま運用を続けて問題ありません。「いつか必要になるかもしれないから」で契約した月額は、使わなくても毎月引き落とされます。分岐点に当たってから課金する、で間に合います。
見落とすとトラブルになるポイント
ここが、プラン選びで最も見落とされる部分です。エルメを解約すると、それまでのデータはすべて削除されます。その中に、法律上残さなければいけない記録が混ざっていないかを確認してください。
有料プランから無料には「戻せない」
正確には、戻す方法はあります。ただしその手順は、一度エルメを解約し、あらためてLINE公式アカウントと連携し直すというものです。解約の時点で、それまでエルメに溜まっていたデータはすべて消えます。データを引き継いだまま有料からフリーに変更することはできません。
スタンダードプラン・プロプランからのダウングレードも、仕様としてできません。「試しに1か月だけ有料にして、合わなければ戻す」という使い方は想定されていない、と考えてください。
その記録、消えても大丈夫ですか
ここで問題になるのが、エルメの中にしか存在しない記録です。
たとえば、スタッフからの欠勤連絡や遅刻連絡、シフト希望の提出をLINEで受けている会社は珍しくありません。便利ですし、記録が文字で残るという点では電話より優れています。ただし、それは同時に労働時間や出勤の記録の一部でもあります。
労働基準法第109条は、労働者名簿・賃金台帳のほか、雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならないと定めています。ただし同法第143条の経過措置により、当分の間は3年間とされています。そして厚生労働省の資料では、出勤簿やタイムカード、始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類も、この「その他労働関係に関する重要な書類」に含まれるとされています。
LINEのトーク画面に残っている欠勤連絡そのものが、ただちに出勤簿になるわけではありません。そこは個別の判断が必要です。ただ、「あとで確認しようと思っていた記録が、ツールの解約と一緒に消えた」という状態は、会社にとって不利にしか働きません。記録がないことの不利益は、記録を残す手間よりずっと大きくなります。
◆ 便利かどうかの前に、この記録は後から使えるか
対策はシンプルです。LINEで受けた内容は、必ずスプレッドシートなどツールの外側に書き出す設計にしておくこと。誰が・いつ・何を申し出たかが残り、後から一覧で確認できる形にしておけば、ツールを乗り換えても解約しても記録は手元に残ります。無料プランのまま始める場合でも、この一手間だけは最初から入れておいてください。
フォームで集める情報にも注意する
予約フォームやアンケートで顧客の情報を集めるときは、個人情報保護法の観点から、何のために使う情報なのかを本人に分かる形で示しておくことが求められます。
難しく考える必要はありません。フォームの冒頭か末尾に「ご予約の確認とご連絡のために使用します」の一文を置けば足ります。あわせて、聞く項目を最小限にすることも実務的な自衛策になります。生年月日も住所も職業も、本当に予約に必要でしょうか。持たない情報は、漏れません。
たとえば、こんな会社の場合
たとえば、スタッフ3人の整体院を考えてみます。予約はLINEで受け、前日リマインドを自動配信。スタッフの欠勤連絡も同じLINEに届きます。友だちは180人ほど。月2回の案内配信をしているので、180人 × 2回 = 月360通。すでにLINE公式アカウントの無料枠200通は超えています。
この会社が取るべき手は、エルメの有料化ではありません。LINE公式アカウントをライトプランにする(5,000円)だけです。予約カレンダーは1つ、フォームも3つ以内で足りているので、エルメはフリープランのままで動きます。合計コストは月5,000円。その代わり、欠勤連絡の内容はスプレッドシートに転記する運用を最初から組み込んでおきます。
※ これは仕組みを説明するための仮定の例です。実際の必要プランは、配信の頻度と友だち数によって変わります。
最小構成で始める手順
LINE公式アカウントを作り、エルメをフリープランで連携する。この時点では費用は一切かかりません。
LINE化する業務を1つだけ決める。①頻度が高い ②社長が対応している ③返答が毎回ほぼ同じ、の3条件で選びます。2つ以上に手を出さないでください。
フォーム1つ+自動応答で組む。ステップ配信やリッチメニューは後回しで構いません。まず1本、動くものを作ります。
受けた内容をスプレッドシートに書き出す導線を作る。ツールの外側に記録を持つ習慣を、最初から組み込みます。
毎月1日に配信通数を確認する。先月の消費通数を見て、200通・1,000通のどちらに近づいているかを把握します。分岐点に当たってから、初めて課金を検討します。
よくある失敗
エルメの「1,000通無料」を見て安心し、LINE公式アカウント側で止まる
最も多い失敗です。無料のまま運用している会社が実際に使えるのは、月200通です。エルメの1,000通という数字は、LINE公式アカウント側で課金していることが前提になっています。
最初からスタンダードプランを契約して、機能を持て余す
予約カレンダーが3つ使えても、店舗が1つなら意味がありません。しかもダウングレードはできないため、「合わなかったので無料に戻す」という判断も取れなくなります。
全員に一斉配信して、通数を一気に溶かす
友だち全員に送れば、1回の配信で友だちの人数分の通数が消えます。タグで絞り込めば、同じ内容を届けながら通数を大幅に節約できます。絞り込み配信は、通数対策であると同時に、ブロックを減らす対策にもなります。
データをエルメの中だけに置いたまま運用する
解約すればすべて消えます。顧客台帳も予約履歴も、スタッフからの連絡も同じです。外側に書き出す設計を、後回しにしないでください。
よくある質問
無料のまま予約は受けられますか
受けられます。フリープランでもサロン・面談予約やレッスン予約は使えます。制限はカレンダーが各1つまでという点だけです。店舗が1つ、メニューが1本であれば、無料のまま予約受付から前日リマインドまで運用できます。
あとから有料にしたら、それまでの設定は残りますか
フリープランからスタンダードプランへのアップグレードでは、設定やデータはそのまま引き継がれます。作り直しは発生しません。問題になるのは逆方向、つまり有料から無料に戻すときです。
有料にしたあと、無料プランに戻せますか
データを保ったまま戻すことはできません。一度エルメを解約して再連携する手順になり、解約の時点でそれまでのデータはすべて削除されます。有料化は「戻れる前提」で判断しないほうが安全です。だからこそ、この記事の3つの分岐点に当たるまでは無料で粘ることをおすすめしています。
LINE公式アカウントとエルメ、どちらを先に有料にすべきですか
ほとんどの小さな会社では、LINE公式アカウントが先です。配信が止まる原因の大半は200通の無料枠であり、エルメの1,000通ではありません。エルメを有料にすべきなのは、カレンダーやフォームの個数が足りなくなったときです。
まとめ
この記事の結論
- エルメのフリープランは、小さな会社が最初の仕組みを1つ作るには十分。止まるのは機能ではなく「量」と「個数」
- 無料運用で先に止まるのは、エルメではなくLINE公式アカウントの月200通
- 課金の判断基準は3つだけ。①月200通を超えた ②予約カレンダーが2つ必要になった ③登録経路を4つ以上に分けたくなった
- 有料から無料には戻せない。データも消える。だから戻れる前提で契約しない
- 明日やること:管理画面で先月の配信通数を確認し、200通の枠にどれだけ近いかを見る
プラン選びで迷う時間より、無料のまま1つ仕組みを作ってみる時間のほうが、はるかに答えが早く出ます。実際に1か月運用すれば、自分の会社が月に何通使うのかが数字で分かります。そこから初めて、課金するかどうかを考えれば十分です。
まずは無料で、1つだけ仕組みを作ってみる
エルメのフリープランは期間の制限なく使えます。初期費用も0円です。この記事の手順どおりに、業務を1つだけ選んで組んでみてください。
なお、他のツールと比べてから決めたい方は、Lステップとエルメを料金で比較した記事もあわせてご覧ください。月額の差だけでなく、無料で試せる範囲の広さが選択の分かれ目になります。
また、スタッフからの欠勤連絡や打刻をLINEで受けようと考えている場合は、記録の残し方に一段の注意が必要です。LINEで打刻した記録が労働時間の記録として認められるかを整理した記事で、押さえるべき要件をまとめています。
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